吉田春治の漆喰彫刻

November 16, 2016

 

 

 2011年3月11日の大震災によって、花泉にある吉田春治の「唐獅子土蔵」もかなり傷付いた。その2年後にボクは以前のホームページに以下のような文章を掲載した。

 

 

岩手県一関市花泉には、素晴らしい蔵がいくつか存在する。

明治時代に左官職人・吉田春治が作った土蔵だ。



蔵という建築物は、基本的に倉庫であるし、現代には必要だと思われていない。



実際今では、蔵を新築したという話すらほぼ聞こえて来ない。



それは仕方ない事かもしれないが、ここでは、もう少し踏み込んで考えてみる。





吉田春治がこれらの蔵を建て、漆喰の唐獅子を庇の上に設置したのは、明治時代の中期



だ。



大きな地震を含めて自然災害の多いこの国で、120年以上も健在であったという事実を



まずは、考えてみなければならない、と思う。



東日本大震災ではかなり傷付いてしまったので、補修・保全の必要はあるものの、蔵と

いうのは、かなり丈夫な建築物である。

丁寧に作った蔵は、ロの字型の壁の芯になる柱の数が多い!(土蔵は、基本的に壁だけ

で踏ん張っている。)これを現代に活かさない手はない。





また、軒裏の手の込んだ垂木の大工仕事などは「黒漆喰磨き」という「磨き」の技法で



黒く光っている。塗料ではない。何回もコテで圧力をかけて表面の密度を高めるという



「圧縮」を基本にした独特な技術である。



「磨き」という技法は、雨や湿気や摩擦から建物を守るために「少しでも長持ちしてほ

しい」という祈りから生まれている。





加えて、この唐獅子の漆喰造形が、特にまた素晴らしい。



柿の木の枝を芯にして、ワラを巻き付け、漆喰を塗って造形している。つまり、彫刻

(削って作ったモノ)ではなくて、盛り付けて出来上がった造形である。



唐獅子は、いずれの蔵でも左右に一対で、右が「あ」左が「うん」だ。



蔵の庇の上に天から「ふわっ」と舞い降りたようなポーズで、その浮遊感が見事!!



重力が何割りか軽減されているような「浮遊感」は、現存する3対の唐獅子すべてに



共通していて、少々古い日本語だが「かろみ」という言葉がピッタリである。



また、イカツイ顔をして蔵を守護する役目はもちろんあるにせよ、「かわいげ」もあ



る。威圧的ではなく、軽快で躍動的な感じを受ける。





大事なものを収蔵するために知恵を尽くして建てられた丈夫な蔵。プラスティックや

ビニールが無い時代に少しでも壁を丈夫にしようと考え出された「黒漆喰磨き」。そし



て、その同じ左官職人の手は、こんなにもレベルの高い立体造形を生み出し、日本的美



意識を見事に表現している。



建築の依頼主は、当時比較的豊かな人たちであったとはいえ、農家である。貴族や権力

者たちではない。



度重なる大きな地震、とりわけ強烈だった2年前の大震災にかろうじて耐えたこれらの



土蔵という建造物と、祈りのような磨きの技術と、高いレベルのかろやかな表現に最大

級の敬意を払いたい、と思うのだ。

                             (2013年3月11日)

 

 

  この文章を振り返りながら、2016年の今、考えていることがある。

 

  この「唐獅子土蔵」の唐獅子は、とんでもなく貴重なものだ、ということ。そしてもう一つ、土蔵の建築技術を「必ず」継承しなくてはならない、ということだ。

 

 土蔵の建築に関しては、①「左官棟梁」を常識として復活させること。②分厚い土の壁を現代に蘇らせること。の二つが重要だと思っているが、今のところ誰もやってくれない。そういう状況なので、いずれ自分がやらねば、なぁ、と思う。

 

 また、漆喰彫刻の傑作である春治の「唐獅子」は、保存の重要性もさることながら、この造形物に「宿った」魂(たましい)ーと言えば良いのか?この希有な「軽さ」「明るさ」「律儀さ」を何とか受け継ぐことができないだろうか?というのが、ボクが現在考えていることなのだ。

 

 ブログというものを始めるにあたり、とりあえず、試しに、この文を書いてみた。

 

 

 

 

 



 

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