土蔵の修復工事について

March 27, 2017

 寒い冬の日々に土蔵の修復工事を二つハシゴしました。いずれも関東近県ですが、詳細は伏せます。

 

 一つ目は昨年末に仕上がった漆喰仕上げの小さめの土蔵で、いろいろ紆余曲折の末、数年越しでようやく仕上がったものです。(写真参照、ですが、あまり詳細には写真を公表しないことにします)

 

  ビシッと見事に仕上がった蔵を、お施主さんはたいへん喜んでいました。

 そもそもこれは、3.11の大震災で被災した「伝統的建造物保存地域」内の蔵だったのですが、数十棟もあるこの地域内の蔵で、唯一「まともな修復」がなされた幸せな事例なのでした。工事終了後数ヶ月が過ぎ、お施主さんもその事に気が付き始めていて、他の人たちの「修復」がいかに「悲惨な結果」であったかも、わかり始めている様子でした。(悲惨な結果になった人々も、この蔵を見に来始めていて、誰がやったのか?と、話題になり始めています。)

 

 ここで、皆さんに質問をします。

 江戸、明治、大正、昭和初期に建てられた優れた「土蔵」をきちんとまともに修復出来る左官の親方が、現在日本に何人居ると思いますか?

 も一つおまけの質問ですが、このような蔵を修復するにあたって、いわゆる「一級建築士」のような人が関わらないと出来ないと、思いますか??そして、そのような人に充分な知識や経験があると思いますか??

 

 答えは、

土蔵の修復を責任持って出来る一級建築士は、今、残念ながら一人も居ません。です。

そして、左官の親方で、土蔵の修復を十全に出来る可能性のある人は、現在「数人だけ」この日本に存在します。わずか数人です。

 

 そして、その人たちでも、全ての蔵の修復が可能とは言えません。ある物件ではこの人が可能で、ある物件ではこの人は不可能、そして、幾人かの優秀な職人の「幸せな連帯」によってのみ修復可能というものもあります。新築の蔵がほぼ建設されていないことから考えると、これは仕方のないことですが、このままでは、技術の継承が途切れてしまう可能性が高い、と言わざるをえません。

 

 「蔵は左官棟梁」という言葉も忘れ去られ、蔵を建てる場合、多くは左官職人が棟梁をし、大工は左官の下についた、ということすらもう誰も覚えていない、というありさまです。(もちろん、すべてがそうではないのですが、大工棟梁として左官の仕上げをも理解していないと、蔵の建設は指揮できないのは明白です。)

 

 幾千、幾万という土蔵が、そのような状態で、震災その他の理由で修復を必要としながら、今、きちんとした職人に出会うことなく、朽ち果てようとしている、というのが現状です。

 

 冬の日に、もう一つの土蔵の修復現場へも行って来ました。

 

 こちらは、漆喰仕上げではなく、「洗い出し仕上げ」の土蔵でした。

( 写真は、まだ目地には木の棒が入っている施工途中の状態ですが、鍵の付け根のおっぱいの部分も見事に洗い出しされています)

 

  おもしろいことに、こちらは、「85年間仕上げを放ったらかされていた」蔵の修復現場です。

 昭和7年の時点で、かなり優秀な左官職人の手で建築開始されたのに、どういう理由なのか?途中で放置され、そのまま85年を経てしまった、、、。というモルタル洗い出し仕上げの蔵です。

 

 震災で被災した地域にありながら、建築本体はほぼ損傷を受けていません。「仕上げ」だけ85年間放置されていたものです。こちらも幸いなことに現在最高峰の職人集団によって「修復」、というか、工事の「再開」がおこなわれている、、、という物件でした。

 

 この文章を書き始めてから、しばらくボクが忙しくなり、ブログが完結しないまま冬は終わってしまい、春になってしまいました。

 

 もう、この二つ目の「洗い出しの蔵」も終了しているでしょう。個人の蔵ですから、公開されることもなく、このまずっと「誰も知らないまま」かもしれません。

 

 蔵をお持ちの方々にお願いです。どうか、ちゃんと修復をおこなえる左官職人を本気でお探しください。ボクも責任持って協力いたします。どうか、へんな工務店や知ったかぶりの人に騙されないようにしてください。以前からのつきあいとかもあるでしょうが、蔵の改修は、ちゃんと出来る人だけが、ちゃんとやる気のある若い人々に技術を伝える貴重な現場でもあるのです。個人的な利益などを超えて、重要な文化的な課題でもあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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